| ”少女・ナイフ” |
| 女の子はナイフを知らなかった様だから、 その痛さとかを恐れずにいた。 僕には傷があって、 それを見る度に今だあの時と同じ様に 心がヅキヅキと痛い。 だから僕から進んでナイフを触る事は余り無い。 でも、それを知らない女の子は、 暖かなナイフにとりつかれ、 色々な人に自分の楽しさを伝えていたし、 ナイフを盗られまいと慎重でいた。 だけれど、どうにも他人が信用できないらしく、 ついには、そのナイフを胸に抱いてしまう様になった。 あぶないと言った。 女の子に僕と同じく、 ヅキヅキといつまでも痛がって欲しくなかったし、 ナイフを恐れて欲しくないと思ったからだ。 でもどんどん、ナイフは女の子の胸に近付いてく。 とても痛いと知らないから女の子はナイフを抱く。 傷は心でヅキヅキと痛み続ける事を知らないから、 女の子はナイフを強く抱く。 まるでナイフの中に入りたがっている。 女の子は、両手でぎゅっとナイフを抱く。 僕は恐れていたけど、女の子はとても幸せそうだ。 とても素敵な笑顔だ。 誰も女の子からナイフを奪う事も、 取り上げる事も出来はしない。 ナイフが女の子から離れる時は、 また新しいナイフが渡された時だろうか。 傷が心でヅキヅキと痛んだ時だろうか。 本当は僕もナイフを抱いてみたい。 ヅキヅキも、 ナイフを抱いた分だけ痛むのだから、 それも悪くないと、女の子を見ていると気付いたからだ。 女の子は、ヅキヅキと痛んでも、 またナイフを抱くだろうか。 心がずっと痛んだとしても、 またナイフを抱いて欲しい。 |